『舞台版 魔法少女(?)マジカルジャシリカ』 について
- はじめに
私は元々『舞台』というものに興味はなかった。好きでも嫌いでもなく、興味がない。
好きな漫画やアニメが舞台化されると聞いても特に見に行きたいと思わないし、実写映画をするとなった場合は難色を示すことすらある。
一度、舞台とは違うがミュージカルをDVD化されたものを友人と鑑賞したことがあるが「酷い」という一言の感想で終わってしまうものだった。
そんな私が『舞台』というものに興味を持つようになったきっかけがこの演劇ユニット【爆走おとな小学生】の作品『魔法少女(?)マジカルジャシリカ』である。
今回はこの『舞台版 魔法少女(?)マジカルジャシリカ』という作品について語っていきたいと思う。
2.『舞台版 魔法少女(?)マジカルジャシリカ~アニメ版なんてありません~』
「ここは偏差値53の東京都立山田高等学校であることは間違いなく事実であり、学力もスポーツも超平凡な公立高校らしさ溢れるベストオブ公立高校として、東京都のど真ん中に設立されてから120年という月日を過ごしているらしく―――」
そんな一人語りを約4分20秒(再演では4分)程度行ってからこの作品は始まる。
正直なところ、この4分以上にわたる一人語りはほとんど意味のない部分が多く、しかしながらその長々としたセリフと演出に好感を持つファンは多く、代名詞のような扱いをされている。
本作品のタイトルに『舞台版』と含まれており、『アニメ版なんてありません』とも記載されていることについて混乱する人は多い。実際、本作品を鑑賞した友人の中には「アニメが原作かと思った」という人もいる。
しかしこれはただのおふざけであり、『舞台版』と称しているがこの舞台が原作である。
ただ、「アニメ・漫画を原作とした舞台」かのように表しているだけだ。そのため、本作品の略称も「ジャシステ」と称している。「ステ」とは舞台版という意味の言葉だ。
本作品の主人公は石野崎美沙子という女子高生である。都立山田高等学校に通う高校2年生。学校に内緒で「魔法少女喫茶チャリンコ」でバイトをしており、『マジカルジャシリカ』という源氏名を用いている。ある日、クラスの男子から呼び出しをもらい、校舎裏に来たところ「マジカルジャシリカ」と呼ばれてしまう。当初、アイドルまがいのアルバイトをしていることを秘密にしていたため人生の終わりを告げたかと思ったが、実はその男子は所謂「ジャシリカ推し」のオタクであった。
そして告げられる「伝説の魔法少女」という単語と襲来してきた「悪の帝王まるやま~ん」「黒幕の女」
石野崎美沙子は伝説の魔法少女『マジカルジャシリカ』であった。
何を言っているかわからないと思うが、私もよくわからない。
しかし、石野崎美沙子はアルバイトとして魔法少女をしていたが、実は「伝説の魔法少女マジカルリエコ」の娘であり本当に本当の魔法少女であったのだ。
本作品において「魔法少女」は少女とは限らない。
『伝説の魔法少女マジカルジャシリカ』を守る5人の「魔法少女」、彼女たちは「魔法少女喫茶チャリンコ」の常連客であり、男性なのである。
これもまた、何を言っているかわからないと思う。しかし、実際にそういう設定なのであり、そういう話なのである。それが「ジャシステ」という舞台なのだ。
これだけを聞くとふざけているように思われるかもしれない。実際に劇中でもふざけている部分は多い。脚本自体にネタを入れているところもあれば、演者によるアドリブで遊ぶことだってある。
しかし、しかしである。本作品はギャグではないのだ。ギャグも含んでいるが、内容はあくまでシリアス。人は簡単に死ぬし、思いは踏みにじられる。大好きな人が死ぬし、大好きな人のために死んでしまう。そんな話だ。
「私が私らしく生きる」という大事なことをこの作品が教えてくれた。今となっては私の座右の銘となっている。私は私らしく生きる。つまりそれはつまりつまるところ、世界は愛で溢れているということだ。
3.『舞台版 魔法少女(?)マジカルジャシリカ☆第壱磁マジカル対戦☆』
ジャシステシリーズの第2弾にして、「アニメ版なんてありません」の前日談にあたる物語である。
「伝説の魔法少女マジカルシリンダーによって世界各国から2人1組18人の魔法少女が集められた。伝説の魔法少女の称号を受け継ぐべく、彼女たちはマジカル大戦を始めるのである」
本作の主人公「ちーちゃま」こと「黒田ちえみ」は、推しの俳優「山寺裕大」に魔法少女になって一緒に世界を救って欲しいと誘われマジカル大戦に巻き込まれてしまう。
本作品では黒幕の女がどうして生まれたのか、そもそも黒幕の女とは何だったのかということを描いている。
個人的には推しの俳優に対する愛の深さ、推しからの愛の深さが描かれており、大変楽しい作品であると思う。特にラストの部分。愛深き故に歪んでしまう。その描写が私には狂おしいほど愛おしく感じられる。
4.『舞台版 魔法少女(?)マジカルジャシリカ―マジカル零₋ZERO-』
ジャシステシリーズ第3弾。マジカル大戦戦よりも更に前の話になる。
かつて世界を救った「伝説の魔法少女マジカルリエコ」。しかしその存在を記憶しているものはほとんどいなかった。
「マジカルリエコ」が世界を救った事実を覚えていた19人の少年少女達はマジカル学園へと招かれる。
そこで彼女たちはマジカルを学び、青春を謳歌する。そして学園を卒業した後、世界を救うためのミッションを行っていく。
本作品では、踊ってみた界のレジェンド、「愛川こずえ」も出演している。
個人的な話ではあるが、「愛川こずえ」は私の推しである。元々好きだった「ジャシステ」という舞台に更に推しの「愛川こずえ」が出演するということで私は東京に向かう飛行機を予約した。私が初めて、そして唯一生で見られた舞台がこの「マジカル零」である。
ただ、前述のとおりこの作品では人がよく死ぬ。この作品、というよりは脚本・演出を担当している加藤光大氏の作品では人が良く死ぬのである。いつ死ぬのだろうかと心配していた。その結果はご自身の目で確認してほしい。
本作品では、「教育と洗脳」について考えさせられた。ぜひ鑑賞してほしい。
そしてなにより、「ごんべぇ」とはこの作品のキャラクターの名前である。
この白いうさぎのぬいぐるみがごんべぇである。
私はこのごんべぇをこよなく愛しており、家に4体存在している。ごんべぇとは概念なのだ。
5.最後に
本文章でジャシステという作品について語らせてもらったが、まだまだ魅力を語りつくせたものではない。そして実際に見ない限りには魅力は分からないだろう。
時系列としてはマジカル零→マジカル大戦→アニメ版なんてありませんではあるが、公開順はその逆である。
また、「アニメ版なんてありません」でも初演と再演で若干話を変えているのでなかなか見応えがあるものである。
演劇ユニット「爆走おとな小学生」の作品は何を見ても魅力を感じるので、その他「勇者セイヤンシリーズ」「初等教育ロイヤル」もぜひとも鑑賞して欲しいものだ。
この「爆走おとな小学生」の舞台に三浜ありさが出演することを願っている。
以上